時間の関係で三校しか見ていませんが
まずは、簡単にMEMO書きだけ。のちほど、詳細に。

大会運営も含めて、いろいろ感心することがありました。

●新島学園 「りょうせいの話」
県大会で審査員をやって以来、九年ぶりに新島を見ました。うまいです。笑わせるツボもよくわかっている。学校や先輩や寮生活に対するオマージュ感もとてもよく伝わります。
高校演劇は、「脚本の構造」がいいか、「アンサンブル」がいいか、「突出する役者」がいるか、のどれかで、上位にくいこみますが、新島は、「アンサンブル」型でしょうか。もちろん、大島先生の脚本もよくできています。
高校演劇の評価でもうひとつ大事なのは、役者がいかに自らを「客体視」できるか。つまり、自分たちが演技をするので、いっぱいいっぱいにならないで、自分以外の役者の演技なり、観客の反応を「同時」に感じられているか、ですが、そのあたりも新島は、高い能力をもっています。
残念なのは、笑いをとる場面と、なんでもない普通の場面で、役者のテンションがあきらかに違う(笑)「笑いの場面」はいかに「笑い」をとるかで、自分たちがやりたいことを決めやすいのでしょうが、なんでもない場面になると、ちょっと役作りが煮詰め切れていないのがばれちゃうかな。

●長野県立岡谷南 「オイディプス」
ギリシャ演劇の古典を岡谷南演劇部が脚色。「運命(神?)」と「人間」が分かちがたく在り続けたギリシャ演劇の戯曲の中に、翻弄されるオイディプスを興味本位に追いかける「マスコミ」を登場させることで、「興味本位の読み手」「観客」「大衆」の視線を劇世界の中に埋め込んでいる。結果、「運命(神?)」に翻弄される主人公が、「大衆」に翻弄される「主人公」へとシフトする。マスコミ批判が、「勧善懲悪」に傾きがちのきらいはあるが、現代風なアレンジとしては、「運命と人間」より「無責任な大衆と個人」のほうが、わかりやすいだろうし、「では運命とはなんなのか」と考えたとき、「他の人間からの視線や評価」ととらえられないこともないだろう。こちらは「脚本の構造」型でしょうか。
役者は、いくつかの役を一瞬で演じ分けるなど、熱演続き。古典を自分たちの「もの」にしようと格闘している真摯な姿勢が見て取れる。ただ、セリフが絶叫型なので、ちょっと聞き取りずらい。呼吸や発声といった技術的なものより、「力」と「熱」で演技をひっぱるのも「高校演劇の魅力」だが、あとほんの少し、技術が練れていると、岡谷南が表現したかった「劇的世界」がもっとストレートに、観客に伝わったはずと、残念に思います。ラストで落ちるはずだった布が落ちなかったというハプニングはありましたが、あそこになにが見えたはずなのか、見えることによって「なにを伝えたかった」のかは、十分伝わったと思う。
演劇は、だんどりが計画通りに進むことも大事だが、全体の世界観として、結果的に伝えてかったことを観客がくみ取れるか否かのほうが重要なので、その意味で、ラストのトラブルはそれほど気にしなくてもいいと私は思っています。

●高知県立春野 「駆込み訴え」
たった一人の役者によるおよそ45分にわたるモノローグ芝居。私自身が、三校しか見ていないので、絶対とは言えませんが、おそらく、今回の大会で最も話題になる舞台のひとつだったでしょう。観劇の後、ロビーに置かれた「速報紙」で知ったのですが、春野高校演劇部は基本的に部員が一人なので、一人芝居をするしかなかったということですが、役者の山田くんが、とにかく圧巻。プロの役者だって、45分の一人芝居を1500人規模の大ホールで演じる機会というのは、そうそうは無いでしょう。(お客さんも二階席含め、70~80%入っていたと思います)
個人的には、この作品を審査員の先生がどう評価されるのか、とても感心があります。芝居の出来、不出来に関わらず、高知の高校生の熱演を見た「大人」は、それをどう捉え、今後のなにに生かしていくのか、私たち大人は、きちんと返していかないといけないと考えます。と、同時に、むしろここまでやれるのだから、やったのだから、山田くんには、ぜひ、今後も演劇を続けて欲しい。続ける中で、『駆込み訴え』という作品は、まだまだ変わっていく。変わらないといけない。青春の思い出で終わらせて欲しくないな。山田くんの中で、ずっと『駆込み訴え』を抱えていってほしい。大きなホールでやる、小さなスペースでやる、知っている人の前でやる、見ず知らずの人の前でやる、山田くんが二十歳になり、三十になり、四十になった時にやる、そんな芝居になる可能性を山田くんは、掴んでいると思います。
●「速報・Silk Times」おもしろいです。
大ホールのロビーには、「8月8日の第一号」にはじまる「速報」が並んでいます。これから演じる学校の紹介、本番を終えた学校の紹介を県内五校の高校生が「インタビュー取材」して、時々刻々刷りだしています。演じ手の思いや努力も伝わるし、それに共感し、多くの人に伝えようという「速報係」の努力に敬意を表します。

●「感想壁新聞」もおもしろい!
ロビーには、各作品に向けて感想が書ける「壁新聞」が貼られています。芝居を観た後って、あんがい、他の人の反応って気になりませんか(笑)「あの芝居、具体的になにってわからないけど、おもしろかった気がする。でも、なにが伝えたかったんだろう。わからなかったのは、自分だけかな・・・」なんて。その点、高校生は、とても率直に、自分の感想を壁新聞に書き込んでいきます。大人はそれを読んで、納得したり、安心したり。そして、ぽつぽつ、書き込む大人も現れてきます。

アナログな方法だけど、「速報」と「壁新聞」は、全国大会の演劇を楽しむためにとても有効に働いています。

今回はひとまず、ここまで。
書きたいことはいっぱいあるね。